Q&A

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暴力団は、社会経済の変化に伴い、また、警察の取締りを逃れるため、民事介入暴力等市民の日常生活や企業の経済活動に深く介入する傾向を強めております。
暴力団がどのような手口で不当な利益を貪ろうとするか、そしてそれに対して市民や企業はどう立向かうべきか。暴力団の典型的な不当要求とその対処法を「Q&A」形式により解説します。

  1. 図書等の送り付け商法
  2. 建設会社に対する下請けの要求
  3. 企業等への寄付金等への要求
  4. スナック経営と用心棒代の要求
  5. 購入商品に関する損害請求
  6. 街宣車による業務妨害
  7. 機関紙の購読要求を断る

図書等の送り付け商法

政治活動団体と称する団体から「高価な図書」が一方的に郵送されてきて、その後電話で執拗に購入代金を要求されて困っています。どうすればよいでしょうか?注文していないのに、勝手に機関紙や図書などを送り付け、購読〔入〕させようとするのは、暴力団等が使う手口のひとつです。

  • 明確な意思表示をする
    購入する意思がないのであれば、明確に断る必要があります。「今回限り」とか「金で済むことなら」というあいまいな態度は、即刻改めるべきです。
  • 代金を支払う義務はない
    売買契約は、一方の承諾なしには成立しませんので代金を支払う必要はありません。もちろんその図書を買うかどうかはあなたの自由です。
  • 送られてきた本は一定期間経てば、処分してよい
    訪問販売法では、販売業者が勝手に商品を送り付けてきた場合
    • 消費者がその商品を使用しないまま届いた日から14日経過した場合
    • 消費者が「買う意思がないから引き取って欲しい」と販売業者に通知し、7日を経過した場合
    には販売業者はその商品の返還を請求することができないと規定しています。
    この期間を過ぎれば、その本を廃棄することもできます。
  • 念の為に内容証明郵便を出しておく
    後日の言い掛かり等を避けるため、相手方へそのまま返送するか、
    • 購入する意思がないので、図書等を引き取ってもらいたい
    • 引き取らないのなら当方で処分する
    旨の通知を「内容証明郵便」で行っておいた方が無難です。

建設会社に対する下請けの要求

当社〔建設業〕が公共工事を受注したところ、建設業界でも有名な暴力団が、同和団体を名乗って、当社を訪れ、「その工事の下請けをさせてもらいたい」といってきました。下請け業者は決定していたので断ったところ、「同和を差別するのか、同和企業の育成は国の方針だ、役所へ電話して指名業者からはずしてやろうか。」とすごんできています。どうしたらよいでしょうか?暴力団が暴力団対策法の適用を免れるため、急遽、同和を名乗る団体をつくり、同和問題を口実にして、不当な利益や義務なきことを要求するいわゆる「えせ同和行為」が横行しています。

  • 不当な要求ははっきり断る
    建設会社は、どの下請け業者を選ぶかを経営上の判断に基づき自由に決定することができます。このような行為に対する基本的な心構えとしては、脅しや嫌がらせに屈することなく、不当な要求は断固として拒否することです。
    あいまいな約束をしたり、安易な金銭的解決を図ろうとすることは絶対にすべきではありません。
    監督官庁の名前を出して圧力をかけようとする場合でも、行政機関は、えせ同和行為の排除に積極的に取り組んでおり、絶対にえせ同和行為に加担することはありません。
  • 法律や警察が守ってくれる
    その男が、指定暴力団員であれば、暴力団対策法の禁止する「不当下請け要求行為」に該当する可能性があります。
    暴力団対策法の適用がない場合にも、面会強要禁止の仮処分を申請するなど有効な対策があります。
    えせ同和行為の対応に苦慮する場合には、法務局、警察、弁護士会等で相談に応じていますから、早い時期に相談し適切な対応について助言や指導を受けてください。

企業等への寄付金等の要求

政治活動団体を名乗る男から突然電話で、「北方領土返還の運動をしているが、寄付金等に協力して欲しい。ついでがあるので街宣車で取りに行く」といってきました。断った場合、街宣を掛けられないか心配です。どうしたらよいでしょうか?暴力団が政治団体を標ぼうし、北方領土返還、差別撤廃、麻薬撲滅などのスローガンを掲げ、これらの活動についての寄付金等名目で、実際には暴力団の活動資金や生活資金を得ることは多く見られ、暴力団の典型的な資金活動の一つとなっております。

  • えせ右翼行為
    最近、暴力団が右翼運動に名を借りた「えせ右翼行為」が増えていますが、暴力団が暴力団対策法の適用を免れるための隠れ蓑として利用しているためです。
  • 基本的な考え方
    暴力団が政治的な主張やスローガンを掲げたとしても、会社がそのような主張を支援するかどうかは、あくまで会社が独自に判断することです。支援しなければならない義務は一切ありません。丁重に、しかも明確に断りましょう。
    なお、指定暴力団員がその威力を示して寄付金等を要求する行為に対しては、中止命令の対象となります。
  • 街宣車が来ても慌てない
    街宣車でやってきても、相手の態度に迎合するような態度は禁物です。不当な要求にはきっぱりと断るべきです。
    「街頭宣伝活動」で著しく業務が妨害されるような事態となった場合は、裁判所に街頭宣伝活動禁止の仮処分を申し立てることができます。場合によっては業務妨害、恐喝、名誉毀損等で警察に訴えることもできます。
    彼らの言動を録音したり、ビデオで録画するなど記録化に心掛けるとともに、速やかに、警察や弁護士会又は暴力追放県民会議へご相談ください。

スナック経営と用心棒代の要求

私はスナックを経営しています。今までこの付近を取り仕切る暴力団に用心棒代という名目で毎月お金を支払ってきました。断りたいのですが暴力団からの仕返しが心配です。大丈夫でしょうか。用心棒代やみかじめ料は、これまで暴力団にとって大きな資金源の一つでした。そこで、暴力団対策法では、暴力的要求行為として指定暴力団が用心棒代を請求することを禁止しました。

  • 明確な意思表示をする
    「今後は用心棒代はお払いしません」とはっきり断ってください。理由は言う必要がありませんが、「警察の指導を受けています」といえばよいでしょう。 
  • 暴対法の規制が強化された
    相手が指定暴力団である場合には、暴力団対策法が有効です。
    • 直接、用心棒代を要求する指定暴力団員は、中止命令の対象となります。
    • 暴力団が、組織的に行う不当な要求行為〔ここでは用心棒代の要求〕を暴力団の業務として捉え、その暴力団の組長に対して、規制(再発防止命令)の対象とすることができるようになりました。〔平成9年の一部改正で追加〕
  • みんなで断れば怖くない
    このような暴対法の規制を受け、各地で、いろいろな業界が暴力団にみかじめ料等の支払いを断ることを決議しています。あなたの加盟している組合あるいは商店街においても、全店で一斉にみかじめ料の支払いを断るようにすれば一層効果があがります。
  • 仕返しの心配はない
    仕返しやお礼参りを心配する必要はありません。
    暴力団にとっては、市民が「仕返しをされるのではないか」とおびえることが大変都合がよいことです。しかし、市民が毅然として暴力団の要求を拒絶したとき、暴力団はそれ以上の要求をすることは希なことです。
    もし、仕返しをした場合、そこに暴力団を待っているのは、脅迫罪、恐喝罪などによる逮捕と懲役という刑罰です。経済的にみても仕返しという行為は暴力団にとって割が合わないものです。

購入商品に関する損害請求

スーパーの店長です。暴力団風の男から「スーパーで購入した食品が腐っていて食中毒になった。わび料を出せ。それと、新聞に謝罪文を載せろ。載せないなら街宣車を店へ回すぞ」と怒鳴り込まれました。どうしたらよいでしょうか?

  • 事実関係を確認する
    まず、客の主張が真実かどうかを確認します。その方法として
    • 客にレシートや商品の提示を求める
    • 店員から販売事実を確認する
    • 当日、同じ商品を購入した他の客から同様の苦情はないか等事実関係を確認し、売り主側に過失がないか、商品の賞味期間の表示などの方法により、買い主に対し生命、身体等を侵害することがないよう十分な注意を尽くしたかどうかを調査します。
  • 商品に欠陥があった場合
    これらの調査によって、客の主張が真実であることが判明した場合は、売り主として客に対して賠償する責任がありますが、損害賠償の範囲は、原則として、治療費や慰謝料等通常生ずべき損害に限ります。
    売り主としては、病院の領収証等の証拠資料の提出を求め、その上で賠償額について交渉することになります。もちろん、この場合でも相手方の過大なわび料の要求や新聞への謝罪文の掲載要求には応ずる必要はありません。場合によっては裁判所に債務不存在確認訴訟を提起するなど法的な対応策を検討します。
  • 客の主張が真偽不明の場合
    調査の結果、商品の欠陥の事実もなく客の主張を証明する資料の提示もないなど単なる言いがかりと認められる場合は、当然賠償の責任はありません。お金で解決しようなどという安易な姿勢は、まさに彼らの思うつぼです。
    こちらがはっきり断ったにもかかわらず、相手方がなおも執拗にわび料などを要求してくる場合には、そのいやがらせの程度によっては刑法上の恐喝罪や業務妨害罪などの犯罪に該当することもあり、また、相手が指定暴力団であり、その指定暴力団の威力を示して金品等を要求する場合には、暴力団対策法に基づく中止命令等の対象になりますから近くの警察や愛知県暴力追放運動推進センターへご相談ください。

街宣車による業務妨害

建設会社の総務課長です。下請会社が施工上のミスをしたのは当社の責任であると、右翼団体を標榜する団体が、街宣車を会社周辺に横付けして、スピーカーの音を最大にして当社を誹謗中傷しています。このような行為をやめさせるには、どうすればよいでしょう。

  • えせ右翼行為の典型
    右翼団体を標榜し或いは右翼運動を標榜して、民事紛争に介入し、団体や個人に対して義務のないことを要求したり不当な金銭を要求する行為は、「えせ右翼行為」として排除されるべきものです。
    とくに、暴力団対策法が施行されて以降、一方では暴力団が右翼団体の看板を掲げたり、他方では暴力団からの転向組が右翼団体に流入したり、暴力団と右翼団体とのボーダレス化が進んでいます。
    ところで、設問のように、人目を惹く街頭宣伝車で乗りつけられると、会社としては、そのこと自体が企業の信用に関わる問題であり、困惑したり不安に駆られたりしてしまいます。大音響のもとに中傷・誹謗の言葉を連呼して回るいわゆる街宣活動の目的は、表向きは街宣を継続し、水面下で金品を要求するという図式であり、えせ右翼行為の典型です。
  • 民事的対応
    えせ右翼行為に対しては、相手を恐れず毅然として対応し、不当な要求は断固拒否する不退転の決意で取り組むことが必要です。
    街宣車を使った民事問題への介入事案や業務妨害活動に対しては、街宣活動等を禁止する仮処分が裁判所より出されており、仮処分がでると通常は街宣活動が停止しています。そこで、早急に弁護士と相談して仮処分を取って下さい。
    なお、仮処分を申し立てるためには、街宣現場における街宣の模様を記録するなど証拠収集をしておく必要があります。街宣車に記載されている団体名、車両番号、街宣車の運転手その他乗務員の顔・姿、拡声器から発せられる音声等を録音録画しておくとよいでしょう。
    仮処分が出されてもなお街宣活動がやまないときは、違反行為に制裁金を課する「間接強制」を申し立てることもできます。
    このように、とりあえず現在そこにある危険や困惑を取り除くために仮処分は極めて有効な方法ですので、まずは、県民会議か弁護士に相談して下さい。
  • 警察との連携
    えせ右翼行為や民事介入暴力等、企業をゆすり、たかる暴力団等の介入事案があれば、早めに警察に相談を持ち込むことも大切です。設問の事案では仮にその行為について現在の段階では脅迫や恐喝事件として立件することは難しいとしても、街宣行為については道路交通法による許可や暴騒音条例による規制をはじめ、その態様如何によっては威力業務妨害罪、名誉毀損罪などの刑事処罰の対象となるなど、警察としても対応できる場合があります。

機関紙の購読要求を断る

当社では、今までは事なかれ主義で購読していた政治団体の機関紙や総会屋の情報誌等の購読を中止することを決め、相手に通知したところ、購読を打ち切った情報誌の発行者が抗議のため、明日来社すると言ってきました。どうしたらよいでしょう。

  • 企業対象暴力の典型
    暴力団は、総会屋等との結び付けを強め、株主権の行使に名を借りたり、社会運動や政治活動を仮装、標榜するなどして合法的な行為を装いつつ企業活動に介入したり、資金源として賛助金や機関紙購読料の支払を強要する事例はかなり見受けられます。
    平成7年に、警察庁及び全国暴力追放運動推進センターが企業を対象として実施した「暴力団に関する企業アンケート調査」においても、回答を寄せた企業の37.5%が、暴力団等から金品の要求を受けたことがあり、さらに、これらの不当要求の内容を見ると、最も多いのが「機関紙(誌)購入の強要」、次いで「機関紙(誌)の一方的な送付」、「寄附金・賛助金名下の金品要求」の順となっています。
  • 不当要求を拒否するための体制作り
    会社自体で機関紙等の不当な購読要求については断固拒絶する旨の基本方針を役員会等で決定し、全社員に徹底しておくことが必要です。過去の例を見ると、担当者が上司への報告を怠り、穏便におさめたい一心から内密に処理するというケースも見受けられます。「担当者だけに責任を負わせない」という会社あげての体制作りをしておく必要があります。
    「事なかれ主義」でトラブルを恐れて一度要求に応じると次から次へと要求がエスカレートし「前に要求に応じたのだから」と断りにくくなり、会社の企業姿勢が甘いとの噂が流れ、他の団体からも狙われるなど悪循環となります。
  • 面談の留意点
    情報誌の購読中止を決め、相手方に通知すると、当然、相手からの抗議・継続要求が予想されますので、対応窓口を一本化し、統一的かつ一貫した対応をすべきです。
    直接面談に応ずる担当者は、民事介入暴力対策として蓄積された対応マニュアル(別掲「暴力団対応のてびき」参照)に則った対応を愚直に守ることが肝要です。
    特に、①面談は会社で行い、②2人以上で対応し、③相手方の確認を行い、④揚げ足を取られないよう発言は慎重に、⑤面談内容を記録するなどにも配慮して下さい。
    継続的な取引関係を終了するわけですから、相手方は繰り返し購読再開を求めてくることが予想されますが、しばらくは一貫した対応を続けて下さい。何回来ても対応が一貫しており、担当者を切り崩せないことが判れば、諦めるのが一般です。
    なお、執拗な面談や購読継続の要求が続き、利益供与要求罪や恐喝罪に該当する場合や面談・架電禁止の仮処分の申し立てを行う必要があると思われる場合は、警察や暴追センターにご相談下さい。

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